心臓手術を受ける前に
1.入院前に気をつけること
一般的に入院前に気をつけること、入院前にやっておいたほうがいいことについて説明します。
細かい部分はそれぞれの病院によって違うので、必ず入院する病院で確認してください。
風邪をひかないようにしましょう!
手術の前に、熱が出たり、風邪の症状があると、手術の後に肺炎になりやすくなったり、具合が悪くなったりするため、手術を延期します。
もし入院予定日の直前に、風邪の症状(咳、くしゃみ、発熱)や、副鼻腔炎(青バナ)、中耳炎(耳痛、耳だれ)、胃腸炎(下痢、嘔吐)などがあったら、早めに必ず病院に連絡しましょう。
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感染症は特に要注意!
手術前1ヶ月前ぐらいから、季節で流行する感染症(インフルエンザ、おたふくかぜ、みずぼうそう、など)が流行っている時期には、人ごみに行かないようにしましょう(下の表を参考にしてください)。場合によっては、保育園や幼稚園、学校も、お休みしたほうがよいです。
もし、保育園や幼稚園、学校、きょうだいなど、感染症にかかった子どもとの接触の可能性があったら、すぐに病院に知らせるようにしましょう。感染症の多くは、症状がない「潜伏期間」があるので、「症状がないから…」とそのまま入院してしまうと、入院後に発症したり、ほかの患者さんにうつしてしまう可能性があります。
表1:感染症の流行時期の目安
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予防接種は早めに!
生ワクチンを接種した後は免疫力が弱まるため、接種して2〜3週間以内に手術を行うと手術の時に感染症にかかりやすくなったり、感染症が悪くなったりする可能性があります。また、手術や麻酔によるストレスで、ワクチンの副反応が強く出る可能性もあります。このためワクチンを打ってから手術までにあける期間が推奨されていますが(表2)、あくまで目安です。それぞれの病院で個別に決めている場合もあるので、手術を受ける病院で確認してください。また、病院から手術の予定日の連絡があった時に、予防接種を受けた日が近ければ、そのことを伝えるようにしましょう。
また、手術した後も輸血などの影響でしばらく予防接種ができない期間があります。特に小さいお子様は、手術の前後で予防接種ができない期間があるため、予防接種はなるべく体調のよい時に早めに行いましょう。
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表2:ワクチンの種類とワクチン接種から手術までにあける期間の目安
![日本小児循環器学会 心臓手術を受ける前に 表2:ワクチンの種類とワクチン接種から手術にあける期間](https://static.wixstatic.com/media/83310d_2898a118e5e742b4951da8933f33334e~mv2.jpg/v1/fill/w_115,h_70,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,blur_2,enc_auto/%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E3%81%A8%E6%89%8B%E8%A1%93%E3%81%AB%E3%81%82%E3%81%91%E3%82%8B%E6%9C%9F%E9%96%93.jpg)
《重要》 RSウイルス感染予防注射「シナジス」について
RSウイルスは大人がかかると風邪症状ぐらいですが、新生児、低出生体重児、早産児低出生体重児、早産児、乳児、特に2歳以下の先天性心疾患(軽い病気の場合や術後は対象とならないことがあります)、慢性肺疾患、免疫不全、ダウン症のお子さんがかかると、気管支炎や肺炎が重症化しやすく、致命的な場合もあります。
RSウイルスによる感染症の重症化を防ぐためのものが「シナジス(パリビズマブ)」ですが、ワクチンではありません。RSウイルスに効果がある抗体成分(免疫力を上げる)を精製したものです。効果は約1ヶ月のため、流行期間に毎月投与する必要があります。他のワクチンとの同時接種も可能です。
流行時期は主に冬ですが、流行期間は年度や地域によって異なるため、投与期間はかかりつけの病院で確認してください。
また、シナジスは手術の直前でも接種できますが、手術の時に効果が弱まってしまう(人工心肺を使うことで抗体が薄まってしまう)ため、手術の後、安定したら早めに追加が必要となります。
頭をぶつけない!
心臓の手術をする時に血がかたまらないようにする薬(抗凝固薬)を大量に使います。手術の直前に頭をぶつけると、手術するまでは血が止まっていた小さなキズから、手術中に再び出血してしまうことがあります。手術の前は、はげしい運動や、ケガをしそうなことは、避けるようにしてください。
もし手術予定日近く(約1週間前)に頭を強くぶつけた時や、血が出るようなケガをした時は、病院に連絡して、その時の状況を伝え、手術ができるかどうか確認してください。
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2.入院前にやっておいたほうがよいこと
虫歯や中耳炎などは、早めに治療!
手術で抵抗力が落ちると、病気が悪くなることがあるので、手術をする前に治療をすませましょう。ただし、治療が心臓の負担になってしまう病気の場合は、どちらの治療を先にするのかは、病状によって違います。主治医の先生とよく相談してください。
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皮膚はきれいに!
皮膚が荒れていると、キズが治りにくかったり、キズからからだの中に菌が入ることがあります。胸だけでなく、手足やおしっこのまわりなども、点滴やカテーテルを入れるので、きれいにしておいたほうがよいです。気になる時は、小児科や皮膚科の先生に早めに相談するようにしましょう。
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お薬を飲む練習
手術のあとは、お薬を飲むことになります。お薬がきちんと飲めることは、早くよくなることにつながります。
お薬の飲ませ方については、いろいろな工夫があります。薬剤師さんに相談してみてください。
お薬をミルクに混ぜると、ミルクの味がおいしくなくなってミルクを飲まなくなってしまうことがあるので、ミルクに混ぜないようにしましょう。
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離乳食をすすめる
手術のあとは、ミルクもふくめて水分は「1日○mlまで」というように、制限されます。ミルク(母乳)だけよりも、離乳食を食べられれば、そのぶん栄養をたくさんとることができますし、満腹感も得られます。無理のない程度に、離乳食をすすめておくとよいでしょう。
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哺乳瓶でミルクを飲む練習
手術のあと、心臓に負担がかかり過ぎないように、水分をどれぐらい飲んでいるか?おしっこがどれぐらい出ているか?を正確に測ります。おっぱいで母乳をあげると、赤ちゃんがどれぐらい飲んでいるかを正確に測れないため、しばらくおっぱいから母乳をあげられないことがあります。哺乳瓶で飲むことにもなれておくと、手術のあと赤ちゃんにとっても、お母さんにとっても楽です。「母乳で育てたい!」というお母さんは、搾乳して哺乳瓶で飲む練習をしてみるとよいでしょう。
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最終更新日:2021.11.01