動脈管開存症
どうみゃくかんかいぞんしょう
PDA (Patent Ductus Arteriosus)
1.心臓のきほん
2.動脈管開存症について
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赤ちゃんはお母さんのお腹の中では「羊水」という水の中にいるため、生まれるまでは呼吸をすることができません。そのかわりに、へその緒を通じてお母さんの血液から酸素をもらっています。
赤ちゃんが生まれるまでの、肺を使わない赤ちゃんの体の血液の流れを「胎児循環」といいますが、肺に血液がたくさん流れないようにするために、赤ちゃんがお腹の中にいる間だけ使う2つの抜け道があります。
動脈管開存症がどんな病気なのか、まず動画をごらんください。(3分12秒)
この抜け道は、どちらも生まれた時に自然に閉じるようになっていますが、時々閉じないことがあります。卵円孔が閉じなかった場合は「卵円孔開存症」、動脈管が閉じなかった場合は「動脈管開存症」と言います。
3.小さく生まれた赤ちゃんの動脈管開存症の治療
小さく生まれた赤ちゃんは(*)、動脈管開存症が多いです(表1参照)。小さく生まれた赤ちゃんの動脈管開存症の治療は、まず注射薬を使います。
ただし、薬の副作用が出ていないかを十分に注意して投与し、薬の効果がなかったり、副作用が強く出る場合は、手術またはカテーテル治療(施設は限られます)で動脈管を閉じます。
*以前は小さく生まれた赤ちゃんを「未熟児」と呼んでいましたが、現在は体重と在胎週数で分類して呼びます。
表1低出生体重児の動脈管治療の割合
4.どんな症状が出るの?治療のタイミングは?
動脈管開存症の治療のタイミングは、動脈管の太さと症状で決まります。
動脈管が太い場合
動脈管が太ければ、動脈管を流れる血流が多く、その分肺に流れる血流が増えます。
肺の血流が増えると、肺の血管が傷んで「肺高血圧」の状態になります。そうすると、呼吸が苦しくなったり、肺炎になりやすくなったりします。
また、肺への血流はそのまま左心房と左心室に流れるため、左心房と左心室にも負担がかかります。
左心室に負担がかかることで「心不全」になる上に、左心室から全身に向かって送り出した血液が、動脈管を通って肺にもどってしまい、全身に流れる血液が少ない状態が続きます。そうすると、ミルクの飲みが悪い、体重が増えない、元気がない、手足が冷たいなどの症状が出ます。
このような症状が出る場合は早めの治療が必要になります。どれぐらい肺や心臓に負担がかかっているかは、心臓超音波検査(心エコー)などの検査をしないとわかりません。専門の病院に相談してください。
動脈管が細い場合
動脈管が細ければほとんど症状がなく、大きくなっても気づかないこともあります。大人になってから、検診などでの心雑音の指摘や、病院で検査をした時にたまたま見つかったりすることもあります。
心不全の症状があれば早めに治療が必要ですが、心不全の症状がない(薬で心不全の症状が出ない)場合は、しばらく様子をみてから、動脈管の形がカテーテルで治療できそうな形(後で説明します)であればカテーテル治療、難しければ手術を行います。
大人になってから(特に高齢になってから)見つかった場合、細くても、長期間、肺への血流が多い状態が続いたことで「肺高血圧」になっていることもあり、手術のリスクが高いこともあります。
いずれにしても、治療のタイミングや治療方法については、それぞれの人の病状などによって違ってきます。担当医によく話を聞くようにしましょう。
5. 治療の方法は?
1:カテーテル治療
動脈管開存症に対するカテーテル治療は、「コイル治療」と「閉鎖栓治療」があります(カテーテル治療についての説明は 「カテーテル治療」のページをごらんください)。
コイル治療
血管にコイル状の金属を詰めて、詰めた直後は完全には血流がなくなりませんが、コイルの周りに血栓(血の塊)ができることで血液が流れなくなるようにする治療です。
動脈管にカテーテルを入れる※
カテーテルを通してコイルを出す
動脈管の中を
コイルで埋める
※大動脈側からコイルを入れることあります
閉鎖栓治療
比較的大きな穴を閉じるための治療で、カテーテルの先端についた傘状の閉鎖栓を、穴のところでずれないように確認しながら広げて、最後に傘の柄を外します。
動脈管にカテーテルを通す
カテーテルから閉鎖栓を出して広げる
閉鎖栓の柄をはずす
「コイル治療」と「閉鎖栓治療」のどちらにするのかは、動脈管の形や太さで決まります。CT検査やカテーテル検査で形や太さを確認します。
動脈管は、形や大きさが人によって違います
カテーテル治療のタイミングや治療方法については、それぞれの人の病状などによって違ってきます。まずは担当医によく話を聞くようにしましょう。
なお、閉鎖栓治療は学会が認めた施設、医師のみができる治療になります。詳しくはこちらをご覧ください。
PDA閉鎖栓施行認定施設(日本先天性心疾患学会ホームページより)
2:手術
手術は左脇から背中にかけて皮膚を切開し、肋骨の間から行うことがほとんどです。
動脈管を直接見て、クリップをかけるか、糸でしばるか(しばって切り離すこともあります)して、動脈管の中を血液が流れないようにします。
ただし、大人になって、特に高齢で手術する場合は、動脈管が硬くなったり、脆くなったりしているため、同じような手術が難しいことがあります。詳しい手術の方法については、担当医によく話を聞いてください。
6. 治療の後は?
子どもの頃に手術をした場合、ほとんどの人がほぼ普通の人と同じように生活できて、運動などの制限もなく、薬を飲み続けることもほぼありません(あくまで病状によって異なります)。
大人になるまで病気に気づかれず、大人になってから治療を行う場合は、長期間、肺や心臓に負担がかかっているため、肺が悪くなったり、心臓の動きが悪くなったりしていることが多いです。
治療をする前の状態によって、治療の後にどれぐらいよくなるかは差がありますが、ほとんどは治療によってそれ以上悪くなることを防ぎ、治療をする前よりも元気になります。
また、ずっと元気でいられるように、通院や内服の継続が必要な場合は、必ずきちんと病院にかかるようにしましょう。
参考ページ
あなたにとって最もよい治療法を、
主治医の先生とよく相談して決めましょう。
最終更新日:2022.02.07